one small step

山に登りながらその風景を撮り、これから登山を始める人のささやかな道標となれば良いかなと思い書いています。その他普段考えてる事なども書きます。

開山祭

4月25日、仕事を終え深夜バスに揺られ今年初の上高地へ足を踏み入れた。

目的は27日の開山祭。

登山を始めたばかりの時、初めての北アルプス焼岳にソロで挑戦するため

上高地に行ったのは思い返せばもう2年ほど前だろうか。

焼岳山頂からの展望も勿論感動的だったが、何より下山後に見た

河童橋からの穂高雄大さ、梓川のまさに清水と呼ぶに相応しい透明度に

この世とは思えない美しさをまざまざと見せつけられ

「もう山からは離れられないな」としみじみ実感したのだった。

 

その後、幾度も上高地へは行くことになるのだが、

本格的な登山シーズンを告げる開山祭というイベントを知り、

是非行きたいとかねてから思っていた。

今回様々なしがらみをかき分け、ようやくこの目で見られる機会を得た。

 

午前5時、バスは大正池に到着。

あいにくの空模様で、天候は翌日も回復は望めないようだ。

 

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岳沢小屋も翌日より営業開始なのだが、屋根はまだまだ見えない。

 

毎回終点のバスターミナルまで直行するが、今回はどうしても

写真に収めたい風景があった。

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無風に近い状態の中、水面が鏡になり雲に隠れた穂高が映る。

未だ雪深い山々は静寂の中で明日から多く訪れる人間を待っていた。

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北アルプスで初めて登った思い出深い山、焼岳もこの日はずっと隠れたまま。

しばし静かな風景を堪能し、車道をバスターミナルに向け歩く。

見慣れた景色が見えた頃、自分の登山シーズンの到来を感じた。

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ターミナルで装備の見直しを行い、この日のテン泊地、徳沢を目指す。

 

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が、徐々に天候が悪化。

明神に着く頃には本降りとなり、雷鳴まで聞こえ出した。

明神館の軒先で逡巡すること15分。やはり雷の中でのテント泊をする勇気が

自分にはなく、急遽小梨平のキャビンの予約をし、

今年初のテン泊は次回に持ち越しとなった。

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ケビンに着く頃にはすっかり身体も冷え、部屋に入った途端に強烈な眠気が遅い、

夕方まで午睡を貪った。

キャビン内で湯を沸かし簡単な食事を終え、風呂に入り夜を待つ。

麓では桜もそろそろ散り始める陽気でも、山は依然冬のまま。

夜は雪がちらつき吐く息も白い。

カメラを携え、河童橋に向かう。鼻をつままれても分からないほどの暗闇。

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ヘッドランプの明かりを頼りに河原に降り、空に向けてレンズを向ける。

穂高の山々のさらに上に一瞬だけ雲の切れ間が見え、星が写る。

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幾度もシャッターを切るが満点の星空は臨めず。

しかしわずかな星でもまるで降ってくるような輝きと数に

吐く感動のため息の白さが重なった。

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梓川もスローシャッターで撮影。昼間は清水だが、夜は黒々とした水の流れ。

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 その日たまたま仕事出来ていたSNSで繋がりのある方にお会い出来、

河童橋で山の話題で立ち話をした。

この日の目的であるテント泊は出来なかったものの、山の良さを改めて感じた。

 

翌日も、天気は曇天。

開山祭は一部のイベントを除き、荒天でも執り行われるので雪が降る中

参加チケットを購入すべく列に並ぶ。

参加費にはピンバッチとこんなお土産が

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雪が吹雪となり2時間ほど立ちっぱなしだったが

ようやく開山祭が始まる。

まずはホルンの演奏。

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祝詞や玉串の奉納を経て、

幣を振る時にあれだけ雪が降っていたのに陽が射し

「ああ、やはり山の神様はいるのだなぁ」と

しみじみ感じ入った。

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しかし寒さに耐えられず一旦バスターミナルへ避難。

ザックをデポし再び戻ると獅子舞が始まっていた。

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舞う人も寒さに震えながらであったが、躍動感のある写真が撮れた。

その後軽食のチケットを持ち軽い食事を済ませ帰路についた。

 

帰りのバスターミナルはこれから穂高へ向かう人や上高地をゆっくり散策する人で

ごった返しており、本格的な登山シーズンを迎えた感があった。

5時間後、新宿に到着。

大きなザックでは電車内で迷惑となる為、

疲労困憊でもなるべく歩いて家まで帰るようにしている。

道すがら首都高の下を通ると山の人から街の人へ気持ちが戻っていく。

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さぁ、今年はどこに登ろうか。

岳人になるべく辿らなければならない路はまだまだ果てしなく続いている。