one small step

山に登りながらその風景を撮り、これから登山を始める人のささやかな道標となれば良いかなと思い書いています。その他普段考えてる事なども書きます。

悩みごと

「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」

 

伊集院静の著書『大人の流儀』の中にある一節がとても印象深い。

悩み事がある時にはどうしても視野狭窄に陥り、

きっとこんな苦しい想いをしているのは自分だけだと思いがちである。

特に自分は息をするように常に考え事や悩み事を抱えているので、

周りにいる他人が能天気に見え、苦々しく感じる。

 

でも当然そんなことはなく、誰しも心の内に何かしらの悩みを抱き、

それでも続いていく日常を普通の顔をして生きている。

恋人の浮気を知りつつ、甲斐甲斐しく尽くしている人。

認知症になった親の面倒を見つつバリバリ働いている人。

病を患い普通に生きていくことが難しいけれど

生きていくためにキツい仕事を毎日こなしている人。

そういう人たちは、いや、そういう人たちほど本当に平然としている。

 

未曾有の大災害に遭って、不躾とも思えるインタビューに対し、

苦笑しながら「どうしたら良いか分からない」と答えるシーンをよく見るが

人は対処しきれない事態があると、心を守るために苦笑いでも笑顔が出るらしい。

だからもしかしたら自分も深い悩みの井戸の底でもがいている時、

他人が見たら平然としているように見えるのかもしれない。

 

「それはそんなに大変なことじゃない」と人が言うことも、

本人にとっては一大事かも知れず、悩みの大小を自分の尺度で測ることは

ナンセンスだなと思う。

ただ、憐憫に身を浸していつまでもぬるい環境に留まることが

決して良いことではないのは皆分かっているはずだ。

大切なことは、悩んだ上でそこから推進されることで

出来れば次のステージに進む時には、涼しい顔でいられたら格好良いと思う。

 

毎日たくさんの選択をし、選ばなかった方にある未来は絶対に知ることが出来ない。

そして開けなかったドアの奥に、本当は大事なことがあったのではないかと

人は思いがちである。

悩みは過去にも未来にも付きまとい続ける。

それを断ち切るには今手にしているものにどれだけ満足出来るかにかかっている。